女性起業家マインドセットに必要な「アサーティブ」な伝え方|断れない性格を直したい起業家へ

生徒さんからの無理なお願いも、つい引き受けてしまう…

値引きしてほしいと言われると、断れずに受けてしまう…
これまで心のバウンダリー、自己決定、自己責任についてお話ししてきました。この3つが整ってきても、最後にもう一つ、必要な力があります。
それが、「アサーティブ」な伝え方——断れない性格を卒業し、自分も相手も大切にするコミュニケーションです。
この記事はこんな方におすすめです!
✔️頼まれると断れず、いつも自分が我慢してしまう方
✔️値引き・無理な要求に、つい応じてしまう先生
✔️なぜ自分が断れない性格なのか、根本から理解したい方
✔️女性起業家として、自分も相手も大切にする伝え方を身につけたい方

みやなりちあき
断れない性格って、実は幼少期からの心の癖が関係していることが多いんです。今日は少し深く、「なぜ自分は断れないのか」の根っこまで一緒に見ていきましょう。そのうえで、実際にどう伝えればいいのかもお伝えしますね。
目次
アサーティブネスとは何か——3つのコミュニケーションタイプ
アサーティブネス(Assertiveness)とは、自分も相手も尊重した、適切な自己主張のことです。コミュニケーションには、大きく3つのタイプがあります。
😔 ①受身的なコミュニケーション
言いたいことが言えず、自分の意思や権利を自分で守れないタイプ。「断れない性格」はここに当てはまります。
😠 ②攻撃的なコミュニケーション
相手の権利を尊重せず、自分の主張ばかりを通そうとするタイプ。
😊 ③アサーティブなコミュニケーション(理想形)
相手が自己主張する権利を認めた上で、自分の意思や気持ちも大切に伝えるタイプ。
多くの先生は、①の「受身的」なコミュニケーションに偏りがちです。優しさゆえに、相手を優先しすぎてしまう。でも、それが積み重なると、自分がすり減っていきます。
なぜ、同じパターンを繰り返してしまうのか
「断れない」というのは、実は多くの場合本人が気づいていない、幼少期からの心の癖が関係しています。心理学の世界では、これを「人生脚本」と呼び、無意識に繰り返してしまう行動パターンとして研究されています。
💡 知っておいてほしいこと
断れない性格は、生まれつきの性格ではなく「身についた習慣」です。習慣であるならば、気づいて書き換えることができます。
「なぜ自分はこうも断れないのか」を根本から理解したい方は、交流分析という心理学理論をもとに詳しく解説した記事をご覧ください。
📖 詳しく知りたい方へ
👉 断れない性格の心理的なルーツ|交流分析と人生脚本から紐解く自己評価のパターン
→ 自己評価の低さの正体、交流分析の「禁止令」「ドライバー」、人生脚本の書き換え方まで詳しく解説しています
これは、前々回お伝えした自己決定にもつながります。「自分がどうしたいか」を自分で選び直すことが、心の癖を書き換える第一歩になるのです。
相談事例|言わずに「こっそり」動くことの危うさ
アサーティブネスについて学ぶ中で、私が特に印象に残っている一冊があります。『夫婦・カップルのためのアサーション:自分もパートナーも大切にする自己表現』という本です。
アサーティブネスは、職場やビジネスの場面だけの話だと思われがちですが、実は一番身近な夫婦・パートナーとの関係にこそ、切実に必要とされるものだと、この本から学びました。
実際に、ある生徒さんからこんな相談を受けたことがあります。
💬 ある生徒さんの相談
「夫が『ママは働かなくていい。家にいればいい。』と言うんです。でも私は、本当は働きたい。だから、こっそり家で働こうと思って、準備を始めました。」
私:「〇〇さんは、働きたいんですね。ご希望を伝えたんですか?」
「いえ…何も言わない方が丸く収まるので…何も言いませんでした。言うと、どうせいい顔しないし、反対されるから。家で働くとしても、バレないようにしたいです。」
このお話を聞いて、皆さんはどう感じましたか?
⚠️ これは「受身的」よりもさらに一歩進んだパターンです
アサーティブネスにおける「受身的なコミュニケーション」は、言いたいことを言わずに我慢する状態でした。でも、この相談事例はさらにその先——「言わずに、こっそり行動する」という段階まで進んでしまっています。
ここで、誤解しないでいただきたいことがあります。
💡 「隠れて行動すること」自体は、悪いことではありません
大前提として、何を選び、どう生きるかを決める権利は、最初からあなた自身にあります。パートナーに相談することはあっても、「許可をもらう」必要は本来ありません。相談はする。でも、決めるのは自分。
だから、「あえて詳しく共有しない」「自分のタイミングで話す」という選択自体は、何も悪くありません。
問題は、「隠す」という行動そのものではなく、その裏にある「構図」です。
🚨 本当の問題は「怯えている」構図
この生徒さんは、こう言っていました。「言うと、どうせいい顔しないし、反対されるから。バレないようにしたい。」
これは、「怒られるのが怖いから、隠れる」という構図です。そしてこれは、実は「怖くて、許可を求めてしまう」構図とまったく同じなのです。
伝えるか、隠すか——行動は違っても、根っこにあるのが「相手の顔色をうかがい、怯えている自分」であるなら、構図は何も変わっていません。
本当に必要なのは、「伝える」か「隠す」かを選ぶことではありません。「決める権利は自分にある」と、自信を持つことです。この感覚こそ、以前お伝えした自己決定そのものです。
💡 怯えではなく、自信からの選択へ
「バレたら怒られるから隠す」——これは怯えからの選択です。
「これは私が決めることだから、今は詳しく話さないでおく」——同じ「話さない」という行動でも、これは自信からの選択です。
行動は同じに見えても、内側にあるものがまったく違います。そしてこの違いこそが、長い目で見たときの自分自身への信頼につながっていきます。
もちろん、伝えることを選ぶなら、アサーティブに伝える方法もあります。
💡 アサーティブに伝えるとしたら、こんな形になります
「家にいてほしいと思ってくれているんだね。その気持ちはありがたいと思ってる。でも、私は本当は働きたい気持ちがあるの。少し話を聞いてもらえないかな?」
これは「許可を求める」言葉ではありません。自分の気持ちを伝え、対話の土俵に乗せる言葉です。結果がどうなるかはわかりません。でも、対話に乗せることができれば、そこから関係が前に進む可能性が生まれます。
この生徒さんのように、ビジネスの相談の中に、実は夫婦関係やパートナーシップの悩みが隠れていることは、とても多いです。教室の先生として、こうした声に触れたとき、「決める権利はあなたにありますよ」と伝えられることも、私たちにできるサポートの一つだと思っています。
教室ビジネスで「アサーティブ」が必要な場面
教室運営の中には、断る力・伝える力が必要な場面がたくさんあります。
💬 よくある場面
✔️ 生徒さんから「もっと安くしてほしい」と言われたとき
✔️ レッスン時間外に無理な質問対応を求められたとき
✔️ キャンセルポリシーを守ってもらえないとき
✔️ 家族やパートナーに「教室の時間を削って」と言われたとき
これらの場面で「受身的」に全部飲み込んでしまうと、心のバウンダリーが崩れ、先生自身が消耗してしまいます。かといって、「攻撃的」に強く突っぱねる必要もありません。アサーティブに、自分の状況と気持ちを伝えることが大切です。
💡 3つのタイプの「隠れたゴール」の違い
アサーティブコミュニケーションの専門家・戸田久実さんの著書によると、コミュニケーションのタイプによって、無意識に目指している「ゴール」が違うといいます。
受身的な人:「嫌われないこと」がゴールになってしまう
攻撃的な人:「相手を論破すること」がゴールになってしまう
アサーティブな人:「自分の気持ちを正直に伝え、相手とも良い関係を保つこと」がゴール
知らず知らずのうちに「嫌われないこと」や「論破すること」がゴールになっていないか、一度振り返ってみると気づきがあるかもしれません。
📋 キャンセルポリシー・受講規約は、アサーティブな関係作りの土台です
実は、キャンセルポリシーや受講規約がない教室は、とても多いです。「そんなに堅苦しくしなくても」と感じる先生も多いかもしれません。
でも、ルールが最初から明確になっていれば、その都度「今回はどうしよう」と悩んだり、断りづらさを感じたりする必要がなくなります。ルールは、先生と生徒さんの両方を守り、対等な関係を作るための土台です。
詳しくは、こちらの記事で解説しています。
実際に、教室ビジネスLABOの実践ミーティングで、こんなご相談がありました。
💬 ある先生からの相談
生徒さんから、こう言われたそうです。
「他のレシピはいらないので、コースもいらないです。単発で、この時間帯でやってほしいんです。」
でも、この先生はコース制でレッスンを運営していて、しかも他のお仕事もされていて、時間に余裕がありません。それでも、「他のレシピはいらないので、と言ってくださった方だし、喜ばれるかな…睡眠時間を削ってでもやった方がいいでしょうか」と、悩んで相談にいらっしゃいました。
これは、皆さんはどう感じますか?
⚠️ これは、アサーティブとは言えません
ここで起きていることを整理してみましょう。
✔️ 生徒さんの要望は、その先生のビジネスモデル(コース制)に、そもそも合っていません
✔️ にもかかわらず、自分の睡眠時間という健康を犠牲にしてまで、それに応えようとしている
✔️ 判断の基準が「自分にできるか」ではなく、「喜ばれるかどうか」になっている
まさに、先ほどお伝えした「嫌われないこと・喜ばれること」がゴールになってしまっている状態です。
これは、心のバウンダリーが崩れているサインでもあります。生徒さんの要望は、生徒さんの都合。それに応えるかどうかを決めるのは、先生自身です。
💡 アサーティブに対応するとしたら
「単発でのご希望なんですね。ただ、私はコースを通してじっくりお伝えする形で運営していて、単発でのご案内は今のところ行っていないんです。もしよろしければ、コースの中でご希望に近い内容をご提案することもできますよ。」
これは、生徒さんを否定する言葉ではありません。自分の運営方針を正直に伝え、できる範囲での代替案を示す言葉です。断る、あるいは条件を伝えることは、冷たいことではありません。自分の睡眠時間や健康を守ることも、先生としての大切な責任です。
🎯 ここがポイント:「方針」として、はっきり伝える
「私はコースを通してじっくりお伝えする形で運営しているので、単発でのご案内は今のところ行っていないんです。」
この一文を、曖昧にせず、はっきり伝えることがとても大切です。
「ちょっと忙しくて…」「今は難しくて…」のような個人的な言い訳で断ろうとすると、「じゃあ落ち着いたら」「少しだけなら」と、押し返されやすくなります。個人的な事情は、交渉の余地があるように聞こえてしまうからです。
一方で、「コース制で運営している」という方針としてはっきり伝えると、それはあなた個人の都合ではなく、ビジネスのルールとして相手に伝わります。ルールには、感情的な駆け引きが起きにくくなります。
方針としてはっきり伝えることは、生徒さんを拒絶することではありません。「誰に対しても同じように運営しています」という一貫性を示すことでもあり、結果的に先生自身も生徒さんも守ることになるのです。
アサーティブに伝える実践方法
① 迷ったときは「後悔しない方」を選ぶ
「言った方がいいのか、言わない方がいいのか」——判断に迷うというご相談は、本当によくいただきます。
そんなときの判断基準はシンプルです。「後で後悔しない方を選ぶ」こと。これは、戸田久実さんの著書『アサーティブコミュニケーション』でも紹介されている考え方です。
「言わなかったら、後でモヤモヤが残りそうだな」と思うなら、伝える方を選ぶ。「言っても言わなくても、どちらでも後悔しなさそう」なら、無理に伝える必要はありません。正解を探すより、未来の自分が後悔しない方を基準にすると、判断がぐっと楽になります。
② 「謝罪+理由+代替案」の型を使う
断るときは、次の3つの要素を順番に伝えると、角が立ちにくくなります。
①相手の気持ちを受け止める(「お声がけありがとうございます」)
②自分の状況・気持ちを伝える(「今回は難しいです」)
③代替案を提示する(「〇〇でしたら可能です」)
例:「せっかくお声がけいただいたのですが、今回の価格でのご案内は難しいです。もしよろしければ、次回のキャンペーン時にぜひご参加ください。」
③ 「NO」ではなく「YESじゃない理由」を伝える
相手を否定する言い方ではなく、自分の都合や気持ちを正直に伝えることを意識しましょう。「できません」ではなく「今回は難しい状況です」という伝え方の方が、相手にも受け取りやすくなります。
④ 小さい断りから練習する
いきなり大きな要求を断るのはハードルが高いものです。まずは「今日は難しいです」「少し考えさせてください」など、小さな場面で断る練習を積み重ねましょう。
⑤ 断っても、関係は壊れないと知る
断ることに罪悪感を感じる先生は多いですが、実際には誠実に断られた相手は「そう言ってくれてありがとう」と感じることの方が多いのです。断ることは、わがままではありません。相手に誠実であるために、自分の状況や感情を偽らないということです。
まとめ
✅ この記事でお伝えしたこと
✔️ アサーティブネスとは、自分も相手も尊重した自己主張のこと
✔️ 断れない性格の背景には、自己評価の低さと「人を喜ばせろ」という思い込みがある
✔️ 交流分析の「人生脚本」理論から見ると、断れないパターンは幼少期に形成された無意識の習慣
✔️ 人生脚本は宿命ではなく習慣。気づけば書き換えられる
✔️ 決める権利は最初から自分にある。相談はしても、許可を得る必要はない
✔️ 「隠れて行動すること」自体は悪くない。問題は「怒られるのが怖くて隠れる」という怯えの構図
✔️ 言うか迷ったときは「後悔しない方」を選ぶという基準がある
✔️ 自分のビジネスモデルに合わない要望に、健康を犠牲にしてまで応える必要はない
✔️ 断るときは「個人的な言い訳」ではなく「方針」としてはっきり伝えると、押し返されにくい
✔️ 教室ビジネスでも、値引き・無理な要求・キャンセルポリシーなど、アサーティブに伝える場面は多い
✔️ 「謝罪+理由+代替案」の型を使えば、角を立てずに断れる
✔️ 断っても、誠実に伝えれば関係は壊れない

心のバウンダリーから始まり、自己決定、自己責任、そして今日のアサーティブネス。この4つはすべてつながっています。境界線を引けるようになると、自分で決められるようになる。自分で決められると、結果を引き受けられるようになる。そして、それを相手にきちんと伝えられるようになる——これが、消耗せずに長く続けられる先生・起業家になるための心の土台です。
📖 ビジネスで自立するための心の仕組みシリーズ(全4回)
👉 【第1回】心のバウンダリー(境界線)とは何か
→ お客様の課題はお客様のもの。共感するけど同情しない
👉 【第2回】自分で決められない人の心理と直し方?起業マインドセット「自己決定力」の鍛え方
→ 判断を人に委ねると、責任が他者に向かってしまう
👉 【第3回】他責・自責をやめたい起業家へ|女性起業家マインドセットに必要な「自己責任」の育て方
→ 他責にも自責にも偏りすぎない、ちょうどいいバランス
👉 【第4回】本記事——女性起業家マインドセットに必要な「アサーティブ」な伝え方
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