健康や食事にこだわりすぎて疲れたら|「オルトレキシアとは?」と「正しく食べなきゃ」から自由になる方法(映画『ちいかわ』が教えてくれたこと)

※この記事には、映画『ちいかわ 人魚の島のひみつ』のネタバレが含まれます。
まだご覧になっていない方は、鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。
先日、映画『ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観てきました。
かわいいキャラクターたちの物語——そう思って観に行ったのですが、いい意味で、心を揺さぶられて帰ってきました。「生きること」「大切な人を守るということ」について、静かに、でも深く問いかけてくる作品だったのです。
そして、観終わったあと、私はふと思ったのです。これは、私がずっと向き合ってきた「食」と「心」の話に、とてもよく似ているな、と。
今日は、少しだけ、その話をさせてください。

みやなりちあき
みやなりちあきは、米粉の美容健康料理の専門家です。
米粉・グルテンフリー・アレルギー対応米粉料理の研究を行い、米粉美容健康料理研究家として、米粉レシピ開発・商品開発のサポート事業を手がけています。美容健康に特化したノンオイル米粉パンの講師育成を行う、ヘルシーライフデザイン協会代表理事も務めています。米粉パンの卸販売・通信販売にも取り組んでいます。
米粉研究歴12年。子どもが0歳のときに料理教室を立ち上げ、レッスンを継続しながら協会を設立。これまでに延べ1500名の受講生を指導し、講師育成も行ってきました。企業・官公庁に向けた米粉活用のサポート実績もあります。
米粉と食の専門家として、日々の暮らしに取り入れやすいレシピ・知識・学びをお届けしています。
Amazon新着ランキング美容・ダイエット部門1位/Amazon新着ランキング食・栄養部門1位/Amazon売れ筋ランキングパン部門2位/横浜LUMINE有隣堂さま 暮らし部門1位/旭屋書店志木店さま 実用書ランキング1位/マイナビニュース掲載/天然生活WEBレシピコラム3連載掲載/サライ.jp(小学館)書評掲載/船橋商工会議所会報誌2025年11月 表紙巻頭インタビュー
講義実績 (敬称略)
東京都 Start Up Hub Tokyo TAMA
株式会社西村機械製作所
カルチュアコンビニエンスクラブ株式会社(蔦屋書店)
ホームメンターズ株式会社(ミリオンセールスアカデミー)など
米粉事業・登壇・レシピ開発相談実績
実績例(敬称略)
米コ塾 米粉カンファレンス 貝印 農林水産省 CookPadTV 株式会社日和ファーム 彩華 有限会社エール 株式会社サトノミライ(コメノソラアトリエ)など
目次
「お得」に、人は簡単に動いてしまう
物語は、ちいかわたちのもとに、一枚のチラシが届くところから始まります。
「特別な島へご招待」。そこには、カンタンな仕事で報酬が100倍になること、限定のごちそうが実質無料で食べられることが、魅力的な言葉で書かれていました。ちいかわたちは、その言葉に惹かれて、島へ向かう船に乗り込みます。
この始まりを観て、私は少しドキッとしました。「お得」「簡単」「今だけ」——こういう言葉で、人はこんなにも簡単に動いてしまうんだな、と。
これは、食や健康の世界でも、まったく同じです。「これを食べるだけで痩せる」「飲むだけで健康になる」。そんな言葉に、私たちはつい、心を動かされてしまいます。悪いことではありません。人間だもの、当たり前のことです。ただ、その”入口”のあとに、何が待っているのか。物語は、そこを描いていきます。
出発点は、いつも「大切な人を守りたい」だった
この物語の”ひみつ”の中心には、人魚をめぐる、ある悲しい出来事があります。
ネタバレになりますが——この島には、「人魚を食べると、永遠の命が手に入る」という言い伝えがありました。そして、それを実行してしまった者たちがいたのです。
でも、ここで大切なのは、その子たちは、悪意で人魚を襲ったわけではないということ。大切な人の命が、失われそうになっていた。たまたま図鑑で「人魚を食べれば命が助かる」と知っていた。だから、藁にもすがる思いで、人魚を食べてしまった。
出発点は、「愛」だったのです。大切な人を、失いたくない。守りたい。その一心だった。
私は、この構造に、深く胸を打たれました。なぜなら、健康食に苦しむ人の出発点も、たいてい「愛」だからです。
💙 「行き過ぎ」の出発点にあるもの
健康食にこだわりすぎてしまう方の多くは、その始まりに、こんな思いを抱えています。
・大切な家族に、病気になってほしくない
・身近な人が病気で苦しむ姿を、見てきた
・怖い経験があって、二度とあんな思いをしたくない
「大切な人に、辛い思いをしてほしくない」——その深い愛が、出発点なのです。
誰も、間違ったことをしようとしたわけじゃない。ただ、愛する人を守りたかった。それだけなんですよね。
でも、愛が「行き過ぎる」と、大切なものを失っていく
けれど、物語はそこで終わりません。
大切な人を守るためにした行動が、めぐりめぐって、島のみんなを傷つけることになってしまう。守りたかったはずのものを、守り方によって、失っていく。この皮肉が、本当に切なかったのです。
これも、健康食の”行き過ぎ”と、同じ形をしています。
「体にいいものを食べさせたい」という愛が、いつのまにか「これは食べちゃダメ」という正しさに変わっていく。良かれと思って、食卓をコントロールし始める。すると——
😢 正しさで食卓を守ろうとすると
・「あれもダメ、これもダメ」で、家族が食卓を楽しめなくなる
・子どもが、隠れて食べるようになる(反動)
・「わかってもらえない」と、自分も孤独になっていく
・いちばん守りたかった「一緒に食べる幸せ」を、失っていく
このように、健康への強いこだわりが、心と生活のバランスを崩してしまう状態を、「オルトレキシア」と呼ぶことがあります。「健康的な食事」そのものへの、とらわれ。決して、意志が弱いとか、心が狭いとか、そういう話ではありません。むしろ、まじめで、愛情深い人ほど、陥りやすいのです。
たどり着いてしまう「暗いところ」——それは、孤立
映画の中で、心に残る歌がありました。セイレーンが歌う、檻の中に閉じ込められて、ずっと暗いところにいる——というような、寂しい情景の歌です。
私はこの歌に、「愛が行き過ぎた先に、たどり着いてしまう場所」が描かれているように感じました。それは、孤立です。
人魚を食べてしまった子たちは、その”ひみつ”を、誰にも言えずに抱え続けます。罪悪感を、たった一人で背負って。——きっと、本当に望んでいたのは、そんな暗い場所ではなかったはずです。

本当は、ただ、大切な人と一緒に、平穏に、幸せに暮らしたかっただけ。その願いは、何ひとつ間違っていなかったのに。
健康食に苦しむ方も、同じです。誰も、孤独になりたくてやっているわけではありません。ただ、大切な人と、自分自身と、健康で幸せに過ごしたかった。それだけ。なのに、こだわりが強くなるほど、「わかってもらえない」と感じ、少しずつ、暗くて静かな場所へ——。
では、その人を「責められる」でしょうか
ここで、私が観ながらずっと考えていたことがあります。
——では、行き過ぎてしまったその人を、責められるでしょうか。
私は、責められないと思うのです。
だって、出発点は「愛」だったから。大切な人を守りたい、その気持ちは、何ひとつ間違っていなかったから。間違っていたとすれば、それは「愛」そのものではなく、「愛の届け方」だったのだと思います。
そして、責めても、何も解決しません。むしろ、責めれば責めるほど、その人は「自分はダメだ」と、もっと隠れて、もっと一人で抱え込んで、暗い場所へ深く入り込んでしまう。
🕊️ 必要なのは、断罪ではなく
行き過ぎてしまった人に必要なのは、「あなたは間違っている」という断罪ではありません。「あなたの気持ちは、わかるよ。でも、その守り方だと、あなたも大切な人も、苦しくなってしまうね」と、隣で一緒に、別の道を探してくれる人の存在です。
これは、私がずっと大切にしてきた考え方そのものでした。禁止ではなく、選択。我慢ではなく、理解。——食べものを「悪者」にして遠ざけるのではなく、体には体の理由があると知って、自分で選べるようになること。それが、暗い場所から抜け出す、いちばんやさしい道だと、私は思っています。
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ちいかわが教えてくれた、やさしい「境界線」
最後に、どうしても書いておきたい場面があります。
物語の終盤、その”ひみつ”を知ってしまったのは、ちいかわだけでした。ちいかわは、やさしい子です。だから、その子たちの秘密を、罪悪感を、自分まで背負おうとしていたように見えました。
でも、秘密の象徴だったものが、海へと流されていったとき——ちいかわの表情が、ふっと緩んだのです。
私には、それが、こう見えました。「これは、あの子たちの問題。私が背負うものではないんだ」と、そっと手放せた瞬間。ちいかわのやさしい心の「境界線」が、すっと引けた瞬間だったのだと思います。
これは、とても大切なことを教えてくれます。共感することと、相手の問題を自分が全部背負うことは、違うのです。
もし、あなたの大切な人が、健康食に行き過ぎて苦しんでいるとしたら。あなたにできるのは、その人を理解し、寄り添うこと。でも、その人の課題を、あなたが代わりに全部背負うことは、できません。そして、背負い込みすぎると、あなたまで一緒に、暗い場所へ引き込まれてしまう。
ちいかわが、そっと手放して、顔を緩めたように。理解し、寄り添いながらも、「これはあの人自身の道」と、やさしく線を引くこと。それが結果的に、あなたと、大切な人の両方を守ります。
おわりに|愛は、間違っていなかった
『ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、かわいい絵柄の奥に、こんなにも深い問いを抱えた物語でした。
大切な人を守りたかった。一緒に、幸せに暮らしたかった。——その愛は、決して間違っていません。もしその愛が、少しだけ行き過ぎて、あなたや、あなたの大切な人を苦しめているのだとしたら。どうか、自分を責めないでください。

間違っていたのは、愛ではなく、届け方だけ。禁止ではなく選択、我慢ではなく理解へ。あなたも、あなたの大切な人も、また笑って食卓を囲めますように。その一歩を、私はいつでも応援しています^^
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「正しく食べなきゃ」に疲れた方こそ、ふっと肩の力が抜けるはずです。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。あなたの毎日の食卓が、やさしく、あたたかいものでありますように。
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※この記事で触れた内容は、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。食との関わりで強くお悩みの場合は、専門の医療機関にご相談くださいね。
